悪魔が守っている/バイブル/梅雨との付き合い方
【悪魔が守っている】
私は不安なの、と彼女は言う。幸せすぎて次の瞬間には不幸になっているのではないか、と。
これは幻で、目が覚めたら孤独に戻っているのでは、と。
そんな彼女をベッドに横たわらせる。
「大丈夫、これは現実につき、安眠してください」
彼女は涙を一筋流すと目を閉じた。山羊頭の言葉を信じる彼女は。
【バイブル】
「またそんな恥ずかしい本を読んで」
親はマンガの事を恥ずかしい本と呼んだ。教育上よろしくない書物だと思っているようだった。
だがその恥ずかしい本で、私は正義を学んだ。友情を考えるきっかけを貰った。努力して勝利して笑い合う事の大切さを思い描いた。
それだけで私の人生は百点なのだった。
【梅雨との付き合い方】
「雨は嫌いだけど好き」
君は言う。濡れるのは嫌いだが、窓から外を眺めた際に見える色とりどりの傘は好きだと言う。
「傘の展覧会みたいで楽しいから」
黒い傘とビニール傘がすれ違う。派手なバラ模様の傘がネギの飛び出たビニール袋を足早に運んでいく。
ストライプの傘が立ち止まり、また進み出す。
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