アナグラム/過守護/おいでおいで
【アナグラム】
東 織姫(ひがし おりひめ)は海が好きだ。寄せては返す波で足を洗い、時折流れて来るクラゲの写真を撮り、砂を掘っては城を形作り、アサリをとる。
「見て! 大量!」
網いっぱいにアサリを詰め込んだ彼女が満足そうに笑う。
アサリをとりまくる彼女は「潮干狩り(しおひがり)姫」と呼ばれている。
【過守護】
トイレに行こうと思い立ち上がったら、廊下に向かう扉がすっと開いた。風呂場でシャワーを浴びながら体や頭を洗っていたら、使いすぎだと言わんばかりに「キュッ」と水を止められた。眠ろうと布団に入ると、耳元でお経が聞こえてきた。子守唄か?
神主に相談すると
「守護霊さんですね」
と言われた。
【おいでおいで】
スーツ姿の男性が矢印に導かれて歩いている。スマホの地図案内アプリが指し示す先は踏切だ。
男性は頭をかきながら唸っている。
確かアプリには「幸せになれる場所」という曖昧な入力をしたはずだ。スマホから目を離して前を向き、意味を理解した。
笑顔で手招く、赤いワンピースの女性が立っていた。
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