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見捨てる/神社も客を選ぶ/それは飯と何が違う/同病あい憐れむ?


【見捨てる】
 田んぼの真ん中で山田さんがグネングネンと体を暴れさせている。山田さんは恐怖に顔を歪ませていた。
「やめて、やめて」
 山田さんは小さな声で懇願しながら体を振り回す。彼女の背後に白い何かがいて、彼女の体を掴んで動かしているのが見えた。
 それを理解してはいけないので、見なかった事にした。

【神社も客を選ぶ】
 顔が良かったわけじゃない。魂に惹かれたわけでもない。入れてくれるお賽銭はいつも十円。もう少し奮発してくれたっていい。
 あの人間はいつも何も願わなかった。何々できますようにとか、幸せになりますようにとか、一切言わなかった。
「こんにちは」
 その一言だけなのが堪らなく心から愛しかった。

【それは飯と何が違う】
「余は贄を要求する」
 偉そうな口の利き方で仮面を被ったマントの男は椅子に踏ん反り返った。
「ほらよ」
 乱暴に皿に置いた生魚。それを見てマントの男は不機嫌そうに此方を見る。
「焼け。煮込め。炊け」
「生贄って普通生だろ」
「生贄ではない。贄だ。ガスパチョにでもしろ」
 なんて御都合主義だ。

【同病あい憐れむ?】
 臆病な狸が一人で心霊スポットに行ったと聞いたので、慌てて様子を見に行った。部屋の中で一人、ぶつぶつ呟いていた。
「何だって一人でそんな所に行ったんだ」
 塩を大量にかけて問い質す。狸はしょっぱさに顔を歪めながら困ったように答えるのだった。
「ここは怖いって、霊が言いまして」
 同情心か。




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