枯れた牡丹
友人に誠実じゃないと詰られた。
俺が二股をしていたからだ。
責められて当然だとは思うが、どちらにも愛情はあったんだ。
りんごが好きな女と出会ったのは仕事終わりの夜の街だった。
仕事先の愚痴やら上司への罵倒やら、聞き流しながらも席を立つことはなかった。
そういう仕事だからというのもあるかもしれない。
だがまっすぐ俺を見てくる女に心を奪われていった。
欲に任せて体を重ねたこともある。
最初に捨ててしまった女でもあった。
紅茶がすきな女とであったのは、りんご好きな女と付き合っているその時だった。
きりりとした目つきの理知的な女だ。
此方もまっすぐ俺を見てくる女で、やはりそれに心奪われた。
俺は俺を認めてくれる女を求めていたのかもしれない。
とんだ甘えただ。
やがて此方の女は俺を捨てた。
二股が判明した直後に、女は言った。
「あなたより仕事の方が面白いわ」
こいつらしいなと思った。
捨てた女。
捨てられた女。
いや、違う。
俺はどちらの女にも見限られたのかもしれない。
現在、俺は一人だ。
これからも一人だ。
俺を誠実じゃないと詰った、将来の弟のためにも。
俺なんかは一人でないといけないんだ。
枯れた牡丹
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