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割れない胡桃


 僕はもうすぐ結婚する。
 不誠実だと責めたてた男の妹と。

 彼女との出会いは、大学時代の友人宅が初だった。
 いいDVDを持っていると自慢げに話す友人に誘われ、家に赴いたときのこと。
 妹だと紹介されたその子こそが、僕の現在の婚約者だ。
 可愛らしい顔立ちに、少女趣味が抜けない性格。
 香りつきの子供用化粧品がお気に入りで今でも使っている。
 特に甘い香りのするリップクリームは忘れられない思い出なのだそうだ。

 恋人の兄はとても気のいい男だった。
 だけど、性には奔放というか、何というか。
 僕はそれを不誠実だと思っていたし、何度もそういった。
 彼には煩がられたけれどこればかりは譲れない。
 僕は恋人にそんな真似はしない。
 二股をかけているだなんてどちらの女性にも失礼じゃないか。

 つい最近、彼女の幼馴染と出会った。
 物静かで実直そうな女性だった。
「お幸せにね」
 彼女はそういって、僕の恋人に微笑みかける。
 恋人が心細そうな顔をして僕の手を握った。
「どうしたの?」
 問いかける。
「なんでもない」
 笑顔が返ってきた。
 その表情に僕は安心を覚える。
 恋人と彼女の間に何かあったのだろう。
 それでも恋人は僕を裏切るまいと笑ってくれたのだろう。
 僕は。
 僕は、この子をきちんと守ろう。
 きちんと。

割れない胡桃




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