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ただいま/天秤にかけるまでもなく


【ただいま】
 汚泥から生まれた怪物は意思を持っていた。ぬるぬるべたべたと、徘徊しては町を汚していく。
 一人の男が思い切って液体洗剤をぶちまけた。泥の塊のような怪物は、きゅう、と禍々しい外見に似つかわしくない声を上げて溶けていった。
 溶け残った残骸を調べてみれば、町から排出された油だったという。

【天秤にかけるまでもなく】
「金より大切なものといったら?」
 君に尋ねられたので、僕は一秒だけ間を置いて答えた。
「人生」
「へーぇ」
「金の為に生きるんじゃなく、生きる為に金を使う……的な」
 そして僕は君に問う。
「金より大切なものといったら?」
 君は即答した。
「娯楽」
 有金叩いて手に入れるべきは心の余裕だと。




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