浮いてる人/顔面蒼白
【浮いてる人】
私には不可視の羽がある。鳥の翼ではない。トンボの羽だった。
トンボの羽であると自覚したのは、感情が昂ぶると背中がブブブと音を立てて震え、少しだけ体が浮いたからだ。
普通の人は飛ばないのだという。一般の人には羽は生えないのだという。
いつか空を飛びたい。
皆と違う視点で人生を見たい。
【顔面蒼白】
「それは、こんな顔でしたか?」
のっぺりとした、目も鼻も口もない顔が眼前に迫る。こんなも何もなんの前振りももなく「のっぺらぼう」が現れたものだから、コメントに困った。
「ええと……もうちょっとイケメンでした」
思わずそう言うと、のっぺらぼうはガクリと崩れ落ちてしまった。ごめん。
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