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人間界の蛸/真夏の都市伝説


【人間界の蛸】
 そこから覗く明るい光景は些か自分には不釣り合いに見えた。暗く狭い自室にこもり思いに耽る私は、煙幕のような独り言を吐いて姿を眩ます。
 カラフルで自由な同年代たちと比べ、私のなんと地味な事か。目立たぬように擬態するのが精一杯だ。
 今日も墨のようにくすぶる思いをノートに連ねていく日々。

【真夏の都市伝説】
 真っ赤なコートに黒い長髪、大きなマスクの大女が、曲がり角で私を待っていた。
「私、綺麗?」
 こんなに暑いのにご苦労な事だ。
「綺麗だよ。その格好じゃ心配だからこれ飲んで」
 自販機で買った緑茶を渡せば、彼女は裂けた口で器用に飲み干した。
「日に焼けたくないんだもの」
 気持ちは分かるよ。




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