弱い強がり/酒飲み妖怪/相対的な心温
【弱い強がり】
明日なんて来なければいい。一人ぼっちのまま朝日を浴びるのは怖かった。
そんな私の事を心配するかのように化け物達が寄ってくる。背を撫でてくれる。
だけど。
朝日に怯えて退散する化け物達が、あまりにも申し訳なさそうな顔をするものだから。
私は無理に笑って、一人ぼっちで朝日を浴びるのだ。
【酒飲み妖怪】
「酒はまだかのう」
「嫌ぁねお爺ちゃん一昨日飲んだでしょう」
「わしゃ毎日飲みたい」
「酒の飲み過ぎは体に悪いんです」
「わし妖怪だから死なん」
「それでも駄目です」
「酒飲み仲間として何卒分かってくれんか」
しつこく食い下がる油すましに化け狸は肩を竦めた。
一昨日三升飲まれたばかりだ。
【相対的な心温】
手を繋ぐ。
あなたの手は冷たいわ。彼女は嬉しそうに言った。
何が嬉しいのだ。何が楽しいのだ。首を傾げて彼女を見つめると、彼女が続ける。
「手が冷たい人は心が温かいのよ」
そんな昔の迷信を信じているというのか。
「なら、あなたの心は冷たいのね」
私が言うと、彼女はぺろと舌を出して笑った。
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