猫/超能力者の墓/青い春
【猫】
どこへ行くのだと不機嫌そうな顔が告げている。私の足を踏みながら。
トイレだよと返しても納得していないようだ。実際について来る。
「入って来る?」
試しに尋ねてみると、何を馬鹿な事をと不機嫌そうに背を向けられた。
だが扉の前で待っているのを知っている。
君は一声出した。
「私の人間よ」
【超能力者の墓】
いつでも君を見ているという手紙が来た。今日私が着ていた服や髪型へのアドバイスが書かれている。
「僕は超能力者で未来が見えるんだ」
あの言葉は本当だったんだ。
毎月決まった日に送られてくる手紙を胸に、君の墓前で手を合わせた。
いつでも君を見ているという言葉は、嘘じゃない。
【青い春】
青い春と書くのだから青臭いに決まっていた。青年期の僕はとても青臭く、まだ見ぬ恋に焦がれていた。
甘酸っぱい思いをできると勘違いして。懺悔のように君に呟くと、表情を変えないまま君は静かに言う。
「君はまだ青い春の中のようだ」
そんなに僕は青臭いだろうか?
君が声もなく笑う。
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