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水の檻/お人好し


【水の檻】
 水槽の中の蛸は二股にも三股にも分かれた自分の足を見て、水槽の外にいる人間へ視線を寄越した。
 蛸の足は切れた部分から二股になって再生するからと調理に使われ、水の檻に戻される事のなんと屈辱な事か。
「人間とは身勝手だ。この足を見てつくづくそう思う」
 蛸の呟きは泡ぶくとなり水面で消えた。


【お人好し】
 お人好しの化け狸が珍しく喧嘩をしたというので慌てて見舞いに行った。
 血の気の多い目で相手を睨み据えたという。あのお人好しのドジが。
 何があったんだと聴けば
「友達を馬鹿にされまして」
 と申し訳なさそうな顔。
 やはり底抜けにお人好しな化け狸に、慣れない事をするもんじゃないと頭を叩いた。




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