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狸とビール/紙一重


【狸とビール】
 人間とはかくも虚しい。化け狸は言った。私は何を知った風に、と彼女を見やる。
「独りよがりじゃないですか」
 化け狸がビールを飲みながら独り言ちた。いや、独りで愚痴った。
「相手の気持ちは分からない、と割り切って生きている妖怪の方がよほど健全だ」
 確かにそうだが余計な世話だ。


【紙一重】
 てにをはを間違えているよ、と高圧的に笑われた事を思い出す。学生の頃の作文だ。
 接続助詞を間違えるよりも、それを盾に相手を嘲笑う事の方がよほど間違いではないのか。
 そう尋ねると、物知りな相手はポカンと呆けた顔をして首を傾げた。
 そういう事は知らないのか。随分と物知りだな。




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