後ろの死神/電話の向こう
【後ろの死神】
いつも背後には死神がいた。気だるげな死神だ。骸骨のマスクを被って、パーカーとダボダボのズボン。
他人には見えない存在らしい。
「人には寿命ってものがあるんだ」
飛び下りようとした私の腕を掴んだ彼は、気だるげな様子のまま言う。
死神のせいで死ねないらしいと悟った昼のこと。
【電話の向こう】
電話の向こうでため息が聞こえる。
意思の疎通ができていない時、君はよくため息をついていたっけ。
「好きだよ」
君が言う。
「私も好き」
私が返す。
君は深くため息をついた。こんなに好き合っているのにねと言外で告げている。
「さようなら」
好きだからこそ……。
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