大金持ちになった男
あるところに、ホームレスの男性がいた。
彼は毎日、神社に行っては投げる賽銭もないのに、願っていた。
「神様、神様、どうか俺を金持ちにしてください。金があったら、こんな暮らしとはおさらばだ。賽銭だって、うんと払います。金さえあったら何もいらない。神様、お願いです」
男性は毎日毎日やってくるので、神様はうんざりしていた。
「しつこい男だ。そんなに欲しければ、くれてやる」
神様はそういうと、彼が金持ちになれるようにしてやった。
翌日から男性のもとには沢山のお金が舞い込むようになった。道を歩いていると、すれ違った人々がお金を分けてくれる。
そのお金でスクラッチくじを買えば、一等が当たった。
賭け事では必ず勝ち、やることなすこと大成功。次々とお金を手に入れた。
あっという間にお金持ちになった男だが、服はホームレスのときのままだった。なので、服を買いに行くことにした。
しかし
「服を下さい」
男が言うと
「すみません、あなたには売れません」
と、どこの店にも断られてしまう。
「なんて失礼な奴らだ! ああ、怒りすぎて腹が減ってきたぞ」
男性は手当たり次第に飲食店へ入ったが、どこもかしこも、あなたには売れません、と断るのだった。
「どうなってるんだ! 金だけあっても仕方ないじゃないか!」
男性が腹立たしさのあまり叫ぶと、男性の目の前に神様が現れた。そして、言った。
「お前は、金さえあれば何もいらない、と言いました。何もいらないのなら、食べ物も、着る物も、必要ありませんよね?」
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