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最後に笑ったのはいつですか?


 最後に笑ったのはいつですか?
 そう尋ねたら、君は笑った。
「たった今ね」
 おかしそうに僕を見る。僕は今、取材中である。
 地元の新聞で連載している小説のネタにするものはないかと、まず身内にインタビューをしているのだ。
 最後に泣いたのはいつですか?
 敬語で尋ねてくる僕が面白いのだろう。改まった態度で問うてくる僕がおかしいのだろう。
 口角に笑みが浮かんでいるのが見て取れる。
「そんなに変かね。僕がインタビューをするのは」
 決まり悪く問いかけたその言葉に君は大きく頷いて、愛嬌の良い顔をほころばせた。
「まずね、あんたが敬語喋ってるの、たどたどしくって笑っちゃうのよ」
「……そんな、言葉を覚えたばかりの幼稚園児じゃあるまいし」
「言葉を覚えたばかりの幼稚園児みたいなのよ! それが!」
 棒読みのことを言っているのだろうか。
 好きな食べ物は何ですか。好きな動物は何ですか。好きな季節は何ですか。
 子供のように定型の文章で問いかける僕を見て、君はつぼに入ったのか笑い転げていた。
 むすりとした僕を見て、また笑う。
「そうやって拗ねるところ、子供みたいね!」
「人のことを猫と呼んだり子供と呼んだり、忙しいな、君は」
「うふふ、あはは! インタビューに向いてないのよ、あんた!」
 君は僕の肩を叩いて、嬉しそうに、楽しそうに、途方もなく声をあげて笑っていた。

「きっとあんたと一緒なら、怒ったり泣いたりしてもまた笑えるわ。あたし、そう思うの」

 ああ、調子の良い事を言ってくれる。




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