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やんぬるかな散り足らぬ


 桃源郷からこの地へ落とされた者が一人、人畜無害な顔をして爪を立てていく。生まれて三年目の事だった。

 超情報過密型総母体、桃源郷。
 世界中の知識という知識を詰めに詰めたと言われるほどの情報量を誇るマザーからは、年間百体の高度AI所持ロボットが生み出される。
 生まれ持った知識はランダム。兵器のスペシャリストが作成されることもあれば、ダジャレしか思い浮かばない奴まで生まれ落ちる。
 性格もランダム。戦争向きな性能を持っているにも拘らず臆病だったり、育児に特化したパラメータを持つ喧嘩狂いだったりと安定しない。
 そんな中での事だった。
 三年前に生み落とされた認識型番5の88が、武器商人として採用されたというのだ。
 確か5の88は料理特化でのんびりやだった筈。それがどうして。
 桃源郷は合成音声で答えた。
 のんびりやは行き着いたのだと。
 料理とは、とのんびりのんびり考えた結果、素材を加工し味のある勝手の良いものへと変質させればそれは料理なのだと行き着いた、と。
 何を言っているのか分からないだろう。心配はいらない。研究者一同、全く理解が出来なかった。
 5の88は、つまり。
 料理をしたのだ。
 目の前に転がる敵機の残骸をうまく料理して、素材を加工して、ライフルに、マシンガンに、刀に、ハンマーに。
 全く大人しそうな顔をした彼もしくは彼女が、美味しく作るつもりのみで、善意に満ちた表情で。
 今日もめりめりと装甲を剥がしていく。
 爪を立てて。
 生まれて三年目の事だった。




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