儲からない本屋
その本屋は、ある双子が開いていた。
開店している時もあれば、店自体が存在しないこともあった。
双子の本屋は開店時には決まって客の手を引き、店に連れ込む。客はサラリーマンと専業主婦ばかりだ。
そうして集めた客に売るのは、決まって絵本か児童書だった。
本屋に勧められた本を、客たちは嫌な顔一つせずに受け取る。読むつもりもないのに持ち帰るのだから、相当その本屋が好きなのだろう。
本屋は代金を受け取らない。
ニコニコと見送り、その後すぐに客を呼び戻す。
そして、また無料で本を渡すのだ。
本屋は必ず、午後三時に一度閉店する。
先ほどまで本を売りつけていた相手である専業主婦に、こう尋ねるために。
「ママ、おなかすいた!」
「今日のおやつなぁに?」
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