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ともし火


「ひねくれパーティーを開きます」
 線香花火が言って、ねずみ花火とロケット花火が集まった。それから私。
 パーティー中はひねくれていなければならない。終わったらみんな正直になるというルールだ。
「こんなの食べたら太っちゃいます」
 いちごのケーキを頬張って文句を言う線香花火。美味しそうだ。
「しゅわしゅわして甘くて、虫歯になるね」
 炭酸ジュースをちびちびのみながら言うねずみ花火。楽しそうだ。
「みんなで集まっても楽しくないな」
 そう言いながらニコニコと笑っているロケット花火。嘘が下手だ。
「洗い物が増えて困るね」
 ケーキを食べながら、私。
 日が暮れたらパーティーは終わり。

「ケーキもジュースも美味しかったです!」
 線香花火が、嬉しそうに言う。
「ひねくれてる時は、みんな無口になるのが面白いね」
 ねずみ花火が、おかしそうに言う。
「褒め言葉なら浮かぶのになあ」
 ロケット花火が、困ったように言う。
 物事を別の面から見て評する遊びが、私たちの中で流行っていた。
 例えば色鉛筆。
 沢山の色があって楽しい。綺麗だ。いつでも虹が描ける。
 そんな褒め言葉が出てきた。
 ひねくれパーティー中は、こうだ。
 色が沢山あって、どれで書けばいいかわからない。時々嘘をついている色がある。
 このパーティーが終わると、みんなは安心したように、また色鉛筆を褒め出すのだ。
「ひねくれパーティーは、褒めたいのを我慢して、わざと楽しくないことを言います」
「するとね、やだなって、こんなに素敵なのになって、思うんだよ」
「我慢してた反動で、いつもより沢山褒めたくなるから、いいリフレッシュになるなあ」
 良いところがあったら褒めたい。その気持ちはとても大事だ。

 私はどちらかというと、いつでもひねくれパーティーをしているようなもので、疲れるからとか、汚れてしまうからなんて言っては、おしゃれも外出もあまりしなかった。
 けれど、このパーティーに参加してから見方が変わった気がする。なんというか、少し面白くなってきたのだ。
 褒めるのが、少し楽しい。
「褒めは素敵ですね」
 線香花火に言われて私は頷いた。
「ひねくれの存在がなければ、素直な褒めも存在できませんから、持ちつ持たれつです」
「そうだね」
 時々行われるひねくれパーティー。
 終わった後の褒め会で彼らと談笑するのが楽しくて、私の薄闇の心に花火が灯るのが嬉しくて。




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