人面犬
骨をくれてやったら喜ぶのか。
それとも人の食う飯で良いのか。
そもそもゴミ捨て場を漁っているこいつが食べるものの基準がわからない。
時刻は午前五時。
私は散歩という名の散策をしていた。
物書きである私は、薄暗いうちから話のネタを探し回るのだ。
「こんな時間に何をしているんだい」
そう声をかければ、そいつはくるりと振り向いて一言。
「放っといてく…」
と、中途半端に返して固まった。
「……それ…」
そいつが指差した先にあるのは、私が食べようと思って買っておいた肉まん。
で。
家の庭に「シロ太郎」という、逆に言いにくい名前を授かったそいつが小屋に住み着く事になったのだが。
どうしたものか。
《人面犬》
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