×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

幽霊岬


 幽霊岬に台風がきた。激しい雨に強い風、大きく打ちつける波。一軒の家がとんできて、町の外れに着地した。
 渦巻く風に乗って幽霊たちが空を飛ぶ。この幽霊たちは空の上から嵐の様子を見て、気象観測所に今の状況を伝える役目がある。白いマントを羽織っているので、町の人からは白いカラス組と呼ばれていた。
 町の外れに着地した家から出てきたのは、山高帽をかぶった猫だった。猫は白いカラス組が飛び回る空を見上げ、幽霊岬にある町にやってきた。
「岬に町があるなんて珍しいですね」
 山高帽をかぶった猫が、たずねる。町に住んでいる幽霊は、猫を家に招き入れると、答えた。
「あなたの家のように、どこかから風に乗って飛んできたのですよ」
「ははあ、なるほど」
 白いカラス組が町に下りてくる。どうやら嵐の観察は終わったらしい。山高帽をかぶった猫を見て、白いカラス組の幽霊は言った。
「おや、幽霊岬に呼ばれましたか」
「幽霊岬に呼ばれるとは何ですか?」
 猫が質問をすると、白いカラス組の幽霊は笑顔で返す。
「幽霊岬は、さみしがり屋な岬なのです。時々、台風に便乗して、新しい住人を家ごと招くのです」
 岬には灯台がひとつ建っていた。
 灯台は照れたように、ちかっ、ちかっと光り、山高帽をかぶった猫を歓迎しているのだった。
 台風が無事に過ぎますように。




*back × next#
しおりを挟む