幽霊岬
幽霊岬に台風がきた。激しい雨に強い風、大きく打ちつける波。一軒の家がとんできて、町の外れに着地した。
渦巻く風に乗って幽霊たちが空を飛ぶ。この幽霊たちは空の上から嵐の様子を見て、気象観測所に今の状況を伝える役目がある。白いマントを羽織っているので、町の人からは白いカラス組と呼ばれていた。
町の外れに着地した家から出てきたのは、山高帽をかぶった猫だった。猫は白いカラス組が飛び回る空を見上げ、幽霊岬にある町にやってきた。
「岬に町があるなんて珍しいですね」
山高帽をかぶった猫が、たずねる。町に住んでいる幽霊は、猫を家に招き入れると、答えた。
「あなたの家のように、どこかから風に乗って飛んできたのですよ」
「ははあ、なるほど」
白いカラス組が町に下りてくる。どうやら嵐の観察は終わったらしい。山高帽をかぶった猫を見て、白いカラス組の幽霊は言った。
「おや、幽霊岬に呼ばれましたか」
「幽霊岬に呼ばれるとは何ですか?」
猫が質問をすると、白いカラス組の幽霊は笑顔で返す。
「幽霊岬は、さみしがり屋な岬なのです。時々、台風に便乗して、新しい住人を家ごと招くのです」
岬には灯台がひとつ建っていた。
灯台は照れたように、ちかっ、ちかっと光り、山高帽をかぶった猫を歓迎しているのだった。
台風が無事に過ぎますように。
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