こんにゃく
スーパーの野菜売り場に、こんにゃくがいた。
元はこんにゃく芋という野菜だったのだから野菜売り場にいてもいいはずだ、と、こんにゃくは真剣に言う。
灰色のぷるぷるしたものがキャベツと人参の間に挟まれていて、少し変な光景だった。
「君は加工品だから、もう野菜ではないと思う」
僕が言うと、こんにゃくはさみしそうに、ぷるぷると揺れた。
「それでも、自分が生まれた場所にいたいと思うのは、いけないことなの?」
「そうか。そうだね。なら君は野菜だと言う権利があるね」
好きでこんにゃくに加工されたわけではないのなら、自称するくらい……。
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