少し歩く
君の訃報を風の噂で聞いた。さよならだけが人生だと、しみじみ思った。
君は最後まで輝いていたと聞く。
君は最期まで笑っていたと聞く。
僕は葬儀にすら出られなかったけれど、君の墓参りには行くつもりだ。君が好きだったデイジーの花を持って。
なんだって輝ける人ばかりが先に逝くかな。どうして惜しい人ばかりが先に逝くかな。僕はどうしようもなく現世に縛られているのに。
どうしようもない僕は、どうしようもなく生きているっていうのに。ああ。
さよならだけが人生だ。さよならだけが。
君は君の生を全うしたのだろう。命燃え尽きるまで君でい続けたのだろう。それが僕には羨ましく思えてならない。
なあ、君よ。最期まで笑っていた君よ。最後まで輝いていた君よ。
僕は生きるよ。
誰にも惜しまれない僕は生きる。
君のように笑って逝ける事はないだろうけれど、僕は僕の生を全うしようと思うんだ。いや、君の代わりに生きるなんて大それた事を言うつもりはない。ただ、僕は僕を生きる事にしたんだ。
いつかあの日の夕暮れを、君と二人、並んで見たあの夕暮れを見られるように、僕はそれまで歩いていくと決めたのだ。
墓参りには必ず行くよ。君の好きだったデイジーの花を持って。
さよならだけが人生だ。さよならだけが。
昨日までのぼんやりした僕ともさよならだ。
さよならなんだ。
*back × next#
しおりを挟む