少女解放運動
魔物が棲む海を、少女は覗き込む。
八本足が少女を覗き返していた。
膨れた頭を持つ魔物は、少女にうねる足を絡ませて海に引きずり込む。
海中は綺麗だった。浮かぶ塵さえ、輝いている。
気づけば少女は人魚となっていた。
現世から少女たちを解き放ってしまうそれを、人々は魔物と呼んで恐れている。
【少女解放運動(海)】
魔物が棲む平原に、少女は足を踏み入れる。
複眼が少女を見つめていた。
六本足の魔物は無数に飛び交い、少女を包み込む。窮屈な世界で縛られて生きる少女を。
やがて彼女には蝶の羽が生え、妖精となって空へ羽ばたいていった。
現世から少女を解き放ってしまうそれらを人々は魔物と呼んで恐れている。
【少女解放運動(空)】
魔物が棲む荒地に、少女は駆け込んだ。
孤高の遠吠えが少女を迎えた。
艶々した毛並みと大きな体は少女を見据え、月に向かって吠える。
彼女は真似て月を見上げた。そして不条理だらけの世界より人狼となって駆ける事を選んだ。
現世から少女を解き放ってしまうそれを、人々は魔物と呼んで恐れている。
【少女解放運動(陸)】
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