こんこんと湧く/深まって/神様のサイコロ
管狐。文字通り、管の中に入っている狐の妖怪。トイレットペーパーの芯や水筒の中にもいる。
ボールペンをノックしたら出てきたのには驚いた。そのまま書こうとしたら狐の足跡が紙の上に並んで、結局書き直し。
ハクション、とくしゃみをしたら、喉からも飛び出してきた。
お陰で口の中が毛だらけだ。
【こんこんと湧く】
深夜と深海は似ている。
夜の町を歩く私が開けた、小さな扉。扉は海に繋がっていた。
どうも歩きにくいと思っていたら水の中。それくらい光景が似ていて気づかなかった。
タカアシガニに会釈をして、グソクムシたちの食事を眺めて、メンダコと踊り、扉を出た。
夜と海。朝が来ることだけが違っていた。
【深まって】
秋の天気は変わりやすい。次々と移ろう空模様に息を吐いた。
「間違えてバケツをひっくり返す、雨。一回休み」
空から女の子の声が聞こえてきて、次の瞬間、突然の豪雨。
一時間もしないうちに雨は止み、再び空から声がした。
「虹が出る。やった、三マス進む!」
本当に虹が出た。リアルな双六だな。
【神様のサイコロ】
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