岩町へ/小さな呼び声/前時代的ル○バ
母を連れて夜行バスに乗る。年中夜なこの町は夜間生活税を取るようになった。その税は昼がある町しか取られないはずだ。
住みにくい町を捨てて、岩だらけの町に引っ越す。
「土地を開墾するのは大変だろうね」
「開墾税を取られるかもしれないね」
まるで生きる事へのペナルティーだなと溜息をついた。
【岩町へ】
曖昧な記憶しか持たない君に、僕だよ、と声をかける。なるべく笑顔で、怖がらせないように。
隣で笑っている妻は、君の手をしっかり握っていた。君が妻の指をぎゅう、と掴む。緊張しているんだろうか。
そうして、口を開いた。
「じじ」
そうだよ、じいじだよ!
君の手を握るばあばと二人、微笑んだ。
【小さな呼び声】
使い古された雑巾は白うねりという妖怪になる。細長い竜のような雑巾は、臭いにおいを漂わせる。
臭さが特徴の妖怪だとは知らず洗濯機で洗ってしまった。
日光に当てて干して、ぱりっと乾かしてしまった。
「柔軟剤も使ってごめんな」
そんな事気にせず白うねりは床を磨く。汚れたらまた洗ってやろう。
【前時代的ル○バ】
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