地球人は僕一人/天邪鬼/枯らす
アパートの中庭に正体不明の青紫色な蔓が生えて、オレンジ色の葉をわさわさ蔓延らせている。
不気味なので管理会社に問い合わせて除草してくれるよう頼んだら、なんと大家が木星人で、木星で流行っている植物を植えたらしいと分かった。
アパートの中庭は今やジャングルだ。
隣の火星人が怒っている。
【地球人は僕一人】
天邪鬼は言うことを聞かずに、神経を逆なでする妖怪だ。必ず逆のことをする。
「私を嫌いになって」
ある女性が天邪鬼に言った。
「ああ、お前なんか大嫌いさ」
天邪鬼は女性のお望み通りに彼女を嫌う。
なぜ逆のことをしないのか?
「好きになってほしくて言ってるんだろ? ならその逆をいくまでだ」
【天邪鬼】
願いが叶う黒い羽がある。人々はそれを求めて鳥を乱獲した。
羽が私の元に舞い込んだ時、大勢の人にそれを渡せと迫られた。
羽を巡って戦争まで起きているらしい。
「願いなんて枯れますように」
そう願ったのも無理はない。
陰鬱な顔をして歩くようになった人々の頭上を、今日もカラスは飛んでいる。
【枯らす】
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