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すねこすり/たまにはお休み、と/暗い恋慕


 妖怪、すねこすりに脛を擦られている。歩きにくい。一歩歩くごとに擦られるので転びそうになる。
 ああまったく、急いでいるのに。
 すねこすりを抱えて歩こうとするとジタバタ暴れて地面に降り、そして脛を擦る。
「すみません課長。すねこすりが出まして」
 そう遅刻の連絡をするのにも慣れてしまった。
【すねこすり】

 妖怪、けうけげん。これが出ると家の人が病気になるとか。
 だからか。私は今、鼻がつまり、微熱が出ている。
「もしもし……」
 会社に電話をかけると、重たい咳が出た。体調が悪いなら休みなさい、とありがたい言葉。
 電話を切った時にはけうけげんの姿は見えなくなっていた。次の家に向かったらしい。
【たまにはお休み、と】

 私はネガティブだから、良い事が起こっても、悪い事の布石だと思ってしまうの。あなたが笑ってくれた。話しかけてくれた。それらは全てあなたに嫌われるための布石。そんなにあなたで頭がいっぱいなのが恨めしくて、私はあらかじめ失恋しておくの。
「おはよう」
 やめて、話しかけないで。胸が痛いの。
【暗い恋慕】




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