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船幽霊/2/あきっぽい


【船幽霊】
「柄杓をくれ」
 海から声がする。船幽霊だ。普通の柄杓を渡すと、船に海水を入れられてやがて転覆してしまう。
「海洋投棄はしない主義なんだよ」
 答えた僕に船幽霊は頷く。
「ああ、そうなの」
 彼女は海に潜って何かを持ってきた。
「釣り糸と、ビニール袋。申し訳ないんだけど」
「勿論引き取るよ」

【2】
「2、3、5、7」
 彼女が数えているのは素数だ。1と自身でしか割れない数。
「1は素数じゃないのね」
「1は1でしか割れないから。孤独なの」
 彼女は笑って人差し指を立てる。私も人差し指を立て、少し笑った。
「孤独と孤独を足すと、初めて素になれるのね」
「私たちみたいに」
 指先が絡まる。

【あきっぽい】
 晴れたかと思ったら雨が降り、そうかと思えば雷が響き、虹が出る。次は台風ときた。
 涼しさと暑さが無秩序にやってきては人の体調を崩していく。
「なんでこうも天気が安定しないのだろう」
 僕が言うと、彼女がのんびり返した。
「秋の神様はそういうお方だから」
 一つのものに留まる事を嫌うらしい。




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