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名ばかり/雨男/楽を許す


【名ばかり】
 十代目、妖怪退治屋。それが私だ。妖怪が出たらすっ飛んでいかなければならない。
「退治屋さん」
 近所のおじいさんが家に来た。
「河童が猿除けの罠にかかっちまってよう。きゅうり畑にいるから見てくれよ」
 私はすっ飛んでいった。
 きゅうり泥棒の報いを受けたんだろう。そんな彼を助けに行くのだ。

【雨男】
 雨降り小僧という妖怪が居ると、必ず雨が降る。お陰でうちは年中洗濯物を部屋干しだ。
 雨雲がなくても降るから不思議だ。
「ご迷惑ならどこかへ行きます」
 雨降り小僧は言う。
「迷惑なんてまさか。あなたが居るから狐の結婚がどんどん成立して、町の景気が良くなってるのに」
 小僧が照れて虹が出た。

【楽を許す】
 見栄を張る事をやめた。できません、という言葉が自然と増えた。
 人はそれを堕落したと呼ぶが、私にとっては確かな進化だった。
 もっと頑張れと人に言われる。
 私は見栄を張る事をやめた身。
「これ以上は限界です」
 笑いながら返す。
 そういえば自分も限界だったと思い出す人が、きっと現れるだろう。




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