うらめしや/栞は旅する/震える
【うらめしや】
「うらめしや」
震える声で言われて、目を瞬かせた。何か恨まれる事をしただろうか?
「生者が元気に生きてるだけで恨めしいのよ」
霊は言う。誰もかれも恨めしいと。
「とりあえず、借りてきたホラーDVD見ちゃっていい?」
「なんで現実よりも作り物の恐怖を選ぶのよ。恨めしいわ」
二人で絶叫した。
【栞は旅する】
ショックを受けた。古本屋に本を売った。それはいい、売ろうと思ったのだから。
しかし栞を挟んだままだった。若葉の絵が気に入っていたのに。
一週間後。古本屋のある町で、あの本と栞を手にベンチに座る女性を見つけた。
戻って来なくていい。なぜか安心して栞を任せる事ができた。巡るものなのだ。
【震える】
地震、雷、火事、大山嵐、みんな怖い。怖くて、とてつもなく大きくて、自分一人では決して立ち向かう事ができない。
立ち上がるのさえ勇気がいる。
後ろ向きだと笑われるかもしれない。だけど。
あなたを失うくらいなら、この弱々しい足で、嫌でも立ち向かわなければと、弱い私達は意を決するのです。
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