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親切な絶望たち/うわん/創作怪談創作


【親切な絶望たち】
 夜の住人が私に手を伸ばす。ただ今午前十一時。百鬼夜行には早い。
「人生は辛かろう、此方においで」
 労わるような声がした。
 電車がプラットホームに止まり、ドアが開く。皆が手招く。
「まだ大丈夫、ありがとう」
 頭を下げて礼を言うと、いつの間にか電車は消えていた。
 疲れていると、彼らは来る。

【うわん】
 うわんに吠えられた。吠え返さないと墓場かどこかに連れて行かれるという話で、うわんと吠え返そうと思ったのだが、どうしてもうわんが有利なルールに納得がいかなかった。
「うわん!」
「今日は豆腐が安かった!」
 試しに何でもない事を吠え返してみたら
「得したな!」
 と人間の言葉で吠えられた。

【創作怪談創作】
 怖い話を作る時は、某県某所でもいいから場所を指定しておいた方がいい。実話は実際の場所に縛られるが、創作話は生まれたてで、その居場所がないからだ。
 居場所がない話はどこに帰る?
 生みの親の元へ帰る。
 帰巣本能というやつだろうか。
 だから某県某所でもいいから場所を指定しておいた方がいい。




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