鏡よ鏡/わらし/人生の壁、あと塗り壁
【鏡よ鏡】
鏡に向かって、お前なんか大嫌い、と吐き捨てる。映った自分は酷い顔をしていて、まるで何日も眠れていないようだった。
雲外鏡は真実を映すという。今の私はこんなにも弱々しいのだと思うと、無性に腹立たしかった。
「大嫌い」
「一つくらい嫌いになれない所あるだろう」
雲外鏡の言葉に涙が溢れた。
【わらし】
座敷童が家から出ていくと、その家は没落するという。サンタクロースや流れ星でも思う事なのだが、幸福を与えてくれる者の幸福は、一体誰が保証するのだろうか。
座敷童だって、幸福を搾取される事なくただ幸せになっていい筈だ。
「パフェ食べに行く?」
「いく」
だから私は時々、座敷童を外に出す。
【人生の壁、あと塗り壁】
屋上から飛び降りようとフェンスを登ったら、塗り壁に邪魔をされた。向こうへ行けなかった。
線路に飛び込めばどうだと思ったら、塗り壁に邪魔をされた。電車がせき止められて遅延した。
なら今度は。そこまで考えて、やめた。突っ立っているだけの塗り壁が見えたから。
泣く壁なんて初めて見たから。
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