老いに憧れ/納涼/新社怪人
【老いに憧れ】
妖怪と人間の寿命差は計り知れない。彼女にとっての一年は、妖怪にとって一ヶ月に満たない。
「せめてお前さんの心が醜かったら、妖怪になったかもしれないのに」
そして永遠に手元に、なんて勝手な事を考える我々に、彼女は微笑んだ。
彼女のしわが増えた顔は、増えてきた白髪は、しかし美しかった。
【納涼】
竹切り狸が切ってきた竹を使って流しそうめんをした。油赤子おすすめのごま油が浮いた麺つゆは、麺に絡んでとても美味しい。
河童がきゅうりを丸ごと流すので、こんな精霊馬ならご先祖様も早く帰って来られるな、なんて考えた。
次に流れるのは豆腐小僧お手製の豆腐。食べると体にカビが生えるらしい。
【新社怪人】
「怪人おめでとう!」
成人おめでとうのようなノリで言われて、私は言葉を失った。
どうやら祖母が海棲生物の怪人だったらしい。覚醒した私は今日から晴れて人外に。
「海系の怪人さん、最近少ないから就職口には困りませんよ!」
役所の人がパンフレットをくれる。
悪式会社なんて初めて聞いた……。
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