夏空と炭酸の魚
どこまでも突き抜けた青い空。太陽の光が容赦なく降り注ぐ。
肌が焼けそうで、しかしその前に溶けそうで、汗がどろどろと噴出してくる気持ち悪さに顔をしかめた。
こんな時に自販機を見つけたら、散在してしまうのが人情というものだ。
ぷしゅ、と蓋を開けてひんやりとしたペットボトルを傾けた。
じゅわりと喉を焼く、冷たく爽快な感触が徐々に染み渡っていった。
木陰に逃げよう、とようやく頭が働いてきたので、コーラさまさまといったところか。
真っ青で、雲がうっすらとしかかかっていない空を見上げていた。コーラが生ぬるくなる前にもう一口飲み、じわりと口の中で暴れる炭酸に息を付く。
空。青い空。それだけならば、海にも似て涼しげなのだけれど。
問題なのは、そこに太陽がいて、太陽は周囲を照らし続けることなのだ。
海に光源はない。だから、太陽から遠ざかれば遠ざかるほど暗く冷たくなっていく。
空はそうではない。太陽からの逃げ場なんてない。
きっと空を泳ぐ魚は太陽に適応した魚なのだろう。
何だろう、空を泳ぐ魚とは。
僕は何を考えているのだろう。
コーラをもう一口。じゅん、と喉の奥で踊る炭酸の泡が、僕に覚醒をもたらす。
もし雲の上が海だったら。
雲海、という言葉もあるのだから、空に海があったってよさそうなものだ。
もし海があったら、どんな生き物がいるのだろうか。
いや、いるはずがない。雲の上を飛ぶ生き物なんて。
しかし、いても不思議ではない。地球のことなんて何も分かってはいない。
太陽からの熱や紫外線を吸収し、何かしらの空気を吐き出す生き物……いるかも知れない。
どうやら、コーラは今の僕にとって、空想を刺激する一品のようだった。
入道雲が遠くに見える。
あれは空を行く生き物たちの巣だったりしてな。なんて、笑いが漏れた。
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