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輝きの山 2/2


 輝く魂の一部になるか、無事に村へ戻って利益をもたらすか。二択しかない分岐点に、青年は言葉もなく山を登る。
 夜が来て、朝が来た。
 やがて最も輝きが強い場所まで到達した青年は、信じられないものを見た。
 水晶だ。
 水晶がいくつもいくつもそびえ立っていた。
 そして、家。
「よお、お前も来たのか」
 いなくなった筈の、力自慢の男が言う。
「生きていたのか」
 驚く青年に答えるのは、二番目に姿を消した、知識を持つ男だった。
「盆地になっている麓の村よりも、こちらの方が過ごしやすくてね」
 今は力自慢の男が運び出した水晶を、知識を持つ男が加工しているのだという。
「いつか麓の村にも知らせてやろう」
 力自慢の言葉に、身寄りのない青年は首を横に振った。
「あの村は不必要な人間を山へ追い立てるようになってしまった」
 真実を知る青年の言葉に、二人は深く悲しんだ。青年の言葉を裏付けるように、それからも多くの“不要な人間”はやって来た。
 彼らは村を作った。誰も追いやる必要のない村を。
 麓の村には誰も帰らなかった。
 輝きの山は依然として輝き続けていた。




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