×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

斜めに巡る/離したくない/かな文字


【斜めに巡る】
 二度目の人生は、君の手に飛び乗って驚かれ、叩き落されるだけの虫だった。
 三度目の人生は、君から餌を貰いすぎて水が濁り、弱ってしまった金魚だった。
 僕ら何度だって巡り会おうと一度目の人生で約束をして、それが叶っているのにどうにもやりきれない。
 四度目の人生は君の息子だった。
 ああもう。

【離したくない】
 手を繋いだ。私よりも高い体温の手が、汗で湿っていた。私よりも低い身長は、道路からの輻射熱で温められている。
「抱っこかおんぶしようか?」
 せめて輻射熱からは逃がしてやりたいと息子に尋ねると
「もう子供じゃないから、いい」
 と小学校低学年のプライドを見せつけられた。手は繋いでいるのに。

【かな文字】
 ひらがなで名前を書いた。小学校ではまだ習っていない字を書いてはいけなかったから。
 ひらがなで名前を書いた。中学校では中二病だと馬鹿にされそうだったから。
 ひらがなで名前を書いた。高校では奇抜な名前だと目立ちたくなかったから。
 ひらがなで名前を書いた。今は自分の子が読みやすいように。




*back × next#
しおりを挟む