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心象低気圧/過去の鈴音/沈んで明日


【心象低気圧】
 気圧のせいだ、心が苦しいのは。気圧のせいだ、体が重いのは。気圧のせいだ、思考が巡らないのは。
 さんさんと輝く太陽と白く大きな雲と元気なセミの声。高気圧だが関係ない。今日の私は気圧と相性が悪いのだ。
「何もしたくない」
 気怠く呟くと、君は言った。
「この気圧の中で呼吸してるだけ凄いよ」

【過去の鈴音】
 風鈴が鳴る。激しく降り注ぐ雨の中、風鈴が鳴っている。
 風鈴が鳴る。風ひとつない酷暑の中、風鈴が鳴っている。
 台風に喜ぶ子供だった僕は今や片付かない仕事に溜息をつく大人となっていた。
 入道雲にはしゃぐ子供だった君は今や下を向いて歩く大人となっていた。
 風鈴は鳴る。僕らを慰めるように。

【沈んで明日】
 喉が渇いた。落ち込む私はとにかく水が欲しかった。目の前には大きな湖。頭から飛び込んだ。
 ぐるり。
 胎児のように体を丸めて水中を沈んでいく私。魚が泳ぐ。光が届かない岩陰で静止して、そよぐ水草を見つめた。
 ぐるり。
 ひんやりとした水が渇きを癒していく。充足感。
 ぐるり。
 次は息がしたいな。




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