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ドロドロ、カラカラ/溶けゆく僕と/夏の微か


【ドロドロ、カラカラ】
 溶けるかと思った。夏に包まれてだ。あまりにも気温が高くて、じわりとかいた汗が顔に纏わり付いてくる。触れればドロドロな感触がした。
 このまま排水溝に流れていって、マンホールの下を通り抜けて下水処理場まで一直線……溶けた僕の行く先を空想していたら家の前だった。
 洗濯物はカラカラだった。

【溶けゆく僕と】
 氷にとっては三十度も二十度も、変わらず灼熱に思えるのだろう。グラスの中で溶けゆく大きな塊を眺めながら、水を飲み干した。
「今日は三十五度になるらしいね」
「嫌だね、こうも暑いと」
「熱が蓄積して、やがてみんな溶けてしまったりしてね」
 氷の姿が消えてなくなる。それでも君は僕の隣にいる。

【夏の微か】
 君の葬式に出席した。遺影の中の君は微かな笑顔を浮かべていて、だけども誰かが無愛想な顔だねと囁くくらいの微かさだった。
 故人になんて酷い言い種だろうと声がした方を見る。微かな笑みの君が頬杖をついて座っていた。
「ねえ、写真の私、無愛想だね」
 夏が見せた幻だったのか。
 揺らめいて消えた。




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