雨/文字を下さい/雨の後は
【雨】
七月七日は雨だった。分厚い雲に覆われて、星の瞬き一つ見えなかった。
「雲の上は年中晴れなんだよ」
スカイブルーのソーダを飲みながら君は言う。だから雲の上にいる織姫と彦星は毎年必ず会えるのだと。
「でも、雨は二人が出会えた嬉し涙っていう説も捨てがたいよね」
雨を見る君はロマンチストだ。
【文字を下さい】
何も思い浮かばない。ペンを置いて唸り声をあげる私に、窓の外の青い空は笑う。雲が開けて陽の光が入ってくる。とても暑い。
何でもいい。文章が降りてきて欲しい。日光でできた触ることができない柱を睨んで、舞い上がる埃が雪のように煌めいているのを見つけた。
ああ、暑い外に出よう。それがいい。
【雨の後は】
「お空が泣いてる」
雨模様を見て娘が言う。子供の感性は万物に感情を持たせる癖があるらしい。
雨がやんだら洗濯物を干そう、と携帯の天気予報を見ていたら、窓に張り付いていた娘が、あっ、と声をあげた。
「お空がびっくりしてる!」
その声に驚いて外を見れば、虹。
七色の驚きが家を囲んでいた。
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