守護精/入道雲/マイペース
【守護精】
妖精がいた。妖精といっても背に羽は生えていないし小さくもない。犬小屋の前でお座りをしている芝犬だった。
「三年前に命を落としまして」
「そう、それはお気の毒に」
「ですが、ご主人が外に出る時は今もついて行くのです」
犬のご主人が出てくる。彼は尻尾を振る。守護精はこうして生まれるのだ。
【入道雲】
夏の雲がもこもこと空に盛り上がっている。道行く人は皆下を向いて、仏頂面で歩いて行くから気付かないけれど。
あの雲があなたの町に着くのはいつ頃だろうか。もこもこと盛り上がったそれに乗って会いに行きたい。
入道雲の下は雨だと聞くから傘をさして飛び降りるのだ。あなたと相合傘になるように。
【マイペース】
「一緒に出かけようか!」
君はそう言って、早足で歩く。僕とは歩くペースが違いすぎて、あっという間に先に行ってしまった。それでも君は気付かずに歩き続ける。
途中で立ち止まって僕を待つ君は
「どこに行っちゃったのかと思った」
と、僕がはぐれたような口振りで言った。そんな君は来年小学生。
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