最宝(さいほう)
ミシンを飼った。買ったのではなく、飼ったのだ。ミシンはとても繊細で、毎日カタカタ使ってやらないと体調を崩してしまう。なので毎日、雑巾を縫った。
立派な雑巾が縫えるようになった頃、ミシンが小さなミシンを連れてきた。野良ミシンだ。放っておいたらボビンの糸が絡まって病気になってしまう。
僕は一生懸命ちびミシンのメンテナンスをした。そして、大きなミシンでは新しくTシャツを作ることにして、ちびミシンで雑巾を縫うことにした。
毎日毎日ミシンの音が響く。
ちびミシンもたくましくなってきたが、もともとが小さい機種のようで、体格はあまり良くならなかった。
上質な雑巾が増える。
やがて僕は結婚し、ちびミシンは伴侶のものになった。ちびミシンは伴侶にとても懐き、僕の時には作ったこともないワンピースなんてものを縫っている。
大型ミシンとちびミシンも夫婦になり、二匹の間にはハンドミシンが生まれた。
お腹の子の相棒になってくれることを願う。