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賢き猫は後出しを嫌って

 できなかったことばかり指摘され、できていたことを忘れ、最初から何もできていなかったかのように錯覚することが多かった。
 人と笑顔で接していたのに、敬語を忘れていたと指摘されて、コミュニケーション自体が下手なのだと錯覚するように。
「勝手に期待して勝手に失望する側にも問題があるのだよ」
 あくびをひとつ、黒猫が私に向かって呟く。
「自分の思い通りにならないから文句を言うわけだが、その手の連中は、事前に要望を伝えておくことをしない。常に後出しなのだよ。それは狡い。後出しで、勝ったことしかない。それは狡いのだ」
 私は自分自身に嫌気が差していたけれど、肩の力を少し抜いた。
「今、お前さんは、ツイてない、という状態にある。それだけ。お前さんがどうこうしようとあくせく働いたところで、運には勝てないのさ。泣くのをおやめ」
 黒猫は、まるで人として生きたことがあるような口ぶりで言う。黒猫の人生相談室は森の奥、私が落ち込む頃に始まり、あっという間に終わるのだ。