時は金なり
「子供に戻りたい」
とこぼす男に、ビール瓶が言った。
「子供になったらビールが飲めませんよ」
「そうだけど、苦労を知らなかったあの頃に戻りたくてね」
「夏休みの宿題や受験勉強、子供ならではの苦労がありますよ」
「どうしてそこまで否定するんだい」
少し不機嫌になった男に、ビール瓶は返す。
「子供だって懸命に生きているのです。無神経で無邪気なまま、遊んで暮らしているわけではありません。毎日が真剣勝負なのは、大人も子供も同じことなのですよ」
それに、とビール瓶は男を見て続けた。
「あなたが大人でいてくれないと、ビールの売り上げが落ちてしまいます」
男は声を上げて笑った。