四季
冬の雨はさみしい。指先が凍えて力が入らなくなっていく様子はとてももの悲しい。死が体にしみ込んでくるような錯覚が心をからめとる。
春の花吹雪はさみしい。咲き乱れていた命が散りゆく様子はとても心細い。果実という次の命への必要な経過であっても切ない。
夏の葬式はさみしい。わいて出た虫が故人の魂と誤認される様子はとても気の毒だ。陽炎たちのぼる葬列は他の季節にないわびしさを想起させる。
秋の日暮れはさみしい。しんと静まり返りゆく季節のさらに静まり返りゆく時間帯はとても痛ましい。明日が来る証拠もないのが歯がゆい。
一年を通して私はさみしい。
拭えない孤独を抱えて立つ。
このさみしさを失えば私は生きてゆけない。