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四号室の怪

 家賃は月に一万円。立地は悪くないものの、部屋全体がほんのりと暗い。いわゆる事故物件である。僕はそこに住み始めた。
 なんでも、このアパートでは変死が多いらしい。浴槽に頭から突っ込んで溺死。玄関のドアにもたれかかるようにして意識不明ののち死亡。二階への階段を上がった直後に昏倒、現在は植物状態など。
 全て角部屋で起こっていることから、A県にある魔の角、だなんて呼ばれていた。別名、四号室の怪。決まって一〇四と二〇四の住人が犠牲になるので、誰も住みたがらず、長い間空き家状態が続いていた。
 というのも、事故物件であることを告知しなくても済むように、一旦その部屋で暮らす仕事をしていた僕の知人も亡くなってしまい、その手のアルバイトですら寄りつかなくなったためだ。
 そんな気味の悪い物件に、なぜ住むことにしたかというと、ぼくが怪談を語る配信者だからで、知人の弔い合戦ではないが、その部屋の何がどう悪いのかを分析するためであった。

 四号室は、古い井戸を潰した土地の上にあり、大きな女の顔がすっぽりと重なっていた。一〇四と二〇四の縦方向に長い女の生首が、古井戸から出ている形だった。
 虚ろな目をした女の顔は、僕がドアを開けると口をぽかんと開く。ドアを閉めると口も閉じる。
 それでなんとなく、打つ手がないと理解した。
 四号室の住人は、女の口の中へ帰っては、日ごと魂を飲み下され、井戸に沈んでいったのだ。
 今日で三日目だが、もう引っ越そうと思う。暮らし始めてからずっと、女に咀嚼される夢ばかり見るから。