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- ナノ -

狸のお店

 一匹の狸がいた。ちくちくと、ふかふかの、まん中くらいの毛並みだった。
 狸は夏の間はやせていて、洗い忘れたわんこのような見た目をしている。その、ちくちくとふかふかのまん中な、洗い忘れたわんこのような狸が、二本足でよたよた歩くのを、ノラ猫は見ていた。
 狸はノラ猫に言った。
「葉っぱ屋さんを開きます」
「葉っぱ屋さんって何だい」
 ノラ猫は狸に尋ねた。
 狸はちくちくふかふかの毛を前足でごしごしと綺麗にしながら、あのですね、と言った。
「狸は頭に葉っぱをのっけて、化けるでしょう」
「うん、たしかに、そうだ」
「化け心地のよい葉っぱと、そうじゃない葉っぱがあるんです。おもちを包むのによい葉っぱと、そうじゃない葉っぱも」
 ノラ猫は、ふうむ、と声を上げた。色々な葉っぱが、この世にはあるのだ。
 洗い忘れたわんこのような見た目の狸は、一生懸命に説明をしていた。
「ススキの葉っぱは、触るとケガをしますでしょう。松の葉っぱは、ちくちくのちくです。それらの葉っぱをお店に並べまして、欲しがる方に分けてあげるのです」
「実に狸らしいお店の出し方だね」
 狸は嬉しそうに鼻の頭をぺろりと舐めると、ちくちくとふかふかのまん中くらいの毛並みを前足で整えて、大きなフキの葉っぱを取り出した。
「本日のおすすめでございます」