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お帰りなさいの話

 カブだとかカボチャだとか、洒落たものをランタンにしている殿方の間を、自分の頭蓋骨をぶら下げた少女が歩いていた。
 もう亡くなっているので、頭蓋骨を取り外したところで頭は凹まない。とことこと暗闇に赤く浮かぶ中華街を抜けて、少女はハロウィンに旅立った。
 いつになっても十月三十一日の街へ。
 少女は名前のない幽霊だった。十月三十一日の街はそんな少女も受け入れた。街は慌ただしかった。
 あと九ヶ月で世界各国がハロウィンになるので、準備をしているのだ。
 先祖たちが現世に向かうための夜行バスの予約や、先祖を敬うためのガイドブック作成、帰ってきた子供にあげると喜ばれるお菓子十選。
 少女はハロウィンの街を抜け出し、赤く輝く中華街を走り抜け、お盆の町へ戻ってきた。こちらでも先祖たちが現世に向かうための精霊馬の予約が行われていた。
 少女は遺影に映った自分を見て、もっと角度を決めればよかった、と後悔しながらポニーサイズのキュウリに跨った。
 死者たちは思い思いに帰る。