父娘の短歌
淫らにも君の胸元飛び込んで、深く繋がる一日の縁。
半年後、たった一度の過ちで、突きつけられた妊娠の二字。
赤ん坊、産み落とされて僕の元、あなたの子よと手紙にはあり。
僕に似たまつげを生やす女の子。どうすれば良い。主に届出。
毎夜泣く。二時間おきに起きて泣く。捨てたい逃げたい、誰か助けて。
時たまに笑う顔見て安堵する。僕は父親? こんな僕でも?
哺乳瓶、煮沸消毒するのにも慣れてきた頃、君が現れ。
「私の子。可愛い私の赤ん坊。元気にしてる? 返してほしい」
ああそうだ、君はそういう人だった。せめて微笑み、君を叩こう。
泣き出した赤子を抱いて家を出る。佇む君を見て見ぬふりで。
未練などないと言い切れたのならば、どれほど格好ついただろうか。
だがしかし、一日限りの縁だから、僕は捨てよう、君の全てを。
さようなら、僕は出て行く、父として。踏み出す一歩、ただ遅々として。
新しく借りた家では我が娘、おぎゃあと泣いても許されそうだ。
「あうあうあ、あわわわわわわ、あわわわわ」何言ってるの? 赤子が笑う。