三つ首と僕の短歌
三つ首の仔犬を拾い名前つけ、右から順に「ケル」「ベロ」「スゥ」。
カリカリもミルクも三倍かかるけど、返る愛情は人一倍。
健やかに大きく育ち犬小屋の改築をした。まるで離れだ。
泥棒が我が家に忍び込んだ夜。ケル、ベロ、スゥが、過剰防衛。
人を噛み病院送りにした犬を、ご近所さんが白い目で見る。
名刺出し、冥府の者と名乗る人。我が家の犬を預かりたいと。
それならば、僕も一緒に引っ越すと、ケル、ベロ、スゥに抱きついて泣く。
悲しげに連れて行かれるうちの犬。行かないで、ねえ。返して、僕に。
番犬の仕事を全くしてくれず、困りましたと、冥府の役所。
冥府まで案内されて見たものは、死者そっちのけ、昼寝する犬。
ケル、ベロ、スゥ。呼びかけに彼らの瞳、僕を見つけて、上がる口角。
冥府でのアルバイトを始めました。傍らに愛するケルベロス。