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僕の絵の具は

 絵の具を買った。
 赤い絵の具からは甘酸っぱいラズベリーの香りがした。
 黄色い絵の具からは濃く爽やかなデイジーの香りがした。
 黒い絵の具からは芳醇でコクのあるコーヒーの香りがした。
 緑の絵の具からは青くむせ返る草花の香りがした。

 青い絵の具からは、塩辛く鼻にツンとくる涙の香りがした。

 君に出会ってから別れるまでの色だったのだと気付いた僕は、真っ白なキャンバスに向かって涙をこぼす。
 透明だった。
 何色でもない雫が、最も僕を語っていた。